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第55話 逆再生の証拠

Author: なつめ
last update publish date: 2026-08-10 21:35:22

 美琴は、何度も同じ音声を聞き返していた。

 待機室の小さな机の上には、旭の端末と、解析用に複製された音声データが並んでいる。奏音の声が入った匿名投稿は、すでに保存され、投稿時刻も拡散経路も記録されていた。

 けれど、美琴はそれだけでは足りないと思っていた。

 画面の中の波形を見つめながら、彼女はイヤホンを片耳に差し込む。何度聞いても、胸が痛む。奏音の幼い声。詩乃の震えた声。それらが、誰かの手で雑に繋ぎ合わされ、母親を傷つける刃に変えられている。

「ここ、変」

 美琴は再生を止めた。

 旭が顔を上げる。

「どの部分ですか」

「奏音ちゃんの声の後。息を吸う間がないのに、次の音へ飛んでる。普通、人が喋る時って、部屋の響きも呼吸も一緒に残る。でもここだけ、空気が変わってる」

 美琴は専門家ではない。

 けれど、音楽家だった。

 声の切れ目。反響。部屋の広さ。空調の低いノイズ。録音機器の位置が変わった時の、わずかな濁り。そういうものを、耳が勝手に拾ってしまう。

 旭は専門の解析担当者と通話を繋ぎ、データを共有した。

 音声は、細かく分解された。通常再生だけでなく、速度を落とし、ノイズだけを抽
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